地球の守護者ガメラ、令和に復活なるか
POST:19/04/18
日本が誇る怪獣といえばやはりゴジラでしょう。1954年に公開された『ゴジラ』を皮切りに昭和、平成とシリーズを重ねたゴジラシリーズは、キングギドラやメカゴジラ、アンギラスなどの人気怪獣を生み出し、別の作品として制作された『モスラ』で登場したモスラや『空の大怪獣ラドン』のラドンも、今やゴジラシリーズの怪獣として名を馳せています。
国外においても熱心なゴジラファンは数多く、1998年に公開された、俗にいうエメゴジこと『GODZILLA』は、そのゴジラとは似ても似つかないフォルムもさることながら、ゴジラをただ単に既存の生物の延長線上としてしか描いていなかったことで『巨大イグアナ』、『ジーノ(Godzilla Is Name Onlyの頭文字を取った造語)』、『ガッズィーラ(英語の発音としてはある意味正しい)』などの蔑称を生み出し、挙げ句その後日本にて制作された『ゴジラファイナルウォーズ』において、公式から『やっぱりマグロ食ってるようなのはダメ』と宣告されてしまいました。
その一方で2014年に公開されたレジェンダリー・ピクチャーズ版の『GODZILLA ゴジラ』は非常に好評を博し、シリーズ化が決定しています。個人的にはややヒューマンドラマに寄せ過ぎな感はありましたが。何にしてもゴジラシリーズが次の令和の時代にも続くことは確定しました。
他方、この通称レジェゴジに対してある考えを抱く人間も多数います(私もその1人ですが)。劇中で語られた『自然における力の均衡を保つ』という推察や人間を歯牙にもかけないこと、転じて人間と敵対していないという点などから、『平成ガメラ3部作』におけるガメラが想起される――これについては、平成ガメラの監督であり、『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』においてもメガホンを取った金子修介氏も言及しています。
当然ガメラ見たろ、ギャレス……いいんだけどね。
と、いうわけで、今回はゴジラの話ではなく、平成ガメラ3部作の話をしたいと思います。
3部作におけるガメラ
平成ガメラ3部作におけるガメラ。その正体は、いずれも劇中にて推察されている範囲では、古代アトランティス人が甲羅上の器に地球の生命エネルギー=マナを注入し作り上げたある種の生体兵器であり、その目的は、増えすぎた人口を整理するために造られた超遺伝子獣ギャオスの駆逐と地球の守護であると言われています。
実際に劇中のガメラの行動をなぞってみると、
- 第一作:復活したギャオスと呼応するように覚醒し、姫神島から飛び立ったギャオスを殲滅
- 第二作:飛来したレギオンによる生態系破壊を阻止するために行動。一時戦闘不能に陥るも復活しこれを撃滅
- 第三作:大量発生したギャオス、及びその変異体と対峙。渋谷の壊滅や京都に大損害を与えるも変異体を斃し、飛来するギャオスの群れに挑む
と、一貫して地球、そして地球の生態系を守護するために活動しています。
しかし、ではガメラは徹頭徹尾人類の味方かというとそうとも言い切れません。
人類はガメラの敵となりうるか
第三作においては、飛来したギャオス・ハイパー2匹とガメラとの戦闘により渋谷は壊滅、1万人もの死者を出しています。このことからも、ガメラが、地球の生態系全体を護るためならば犠牲は厭わないことは想像に難くありません。
また、第二作の最後にて、ガメラが最終的に護るものは地球そのものであり、もし人類が生態系の破壊を続けた場合ガメラの敵になる可能性が示唆されています。あくまで可能性というだけの話ではありましたし、最後までガメラは人類とは敵対することなく三部作は終了しますが、もし第三作でギャオスの群れが飛来せず、そのまま時代が進んでいたら、ガメラ対人類の戦争が勃発していたかもしれません。
それでは、平成三部作を振り返りつつ、ガメラという存在、そしてガメラと死闘を繰り広げた怪獣たちにスポットを当てたいと思います。
ガメラ大怪獣空中決戦
記念すべき平成三部作の一作目にしてガメラ30周年記念作でもある『ガメラ 大怪獣空中決戦』は、従来のガメラ作品にあった『子供向け』という印象を払拭し、実際に怪獣が現れた際にどのように報道されるか、生物学的に現れた怪獣はどういった存在なのかなどリアリティを追求。更に、視点を人間の目線に合わせることによる怪獣の巨大さの演出、ギャオスによる人間の捕食シーンなどこだわりが随所に見られ、その結果、それまでとは異なる『大人向け』の怪獣映画として高評価を得ました。
個人的に特筆すべきは、ガメラやギャオスはどういった経緯で誕生した生物なのかということを追求していることでしょうか。
ゴジラの場合ですと、『核実験(あるいは核廃棄物)の影響で古代の恐竜が異常進化した』ということ以上のことは、『GODZILLA ゴジラ』や『シン・ゴジラ』を除きほとんど語られません。そういう存在なのだと既に世界に受け入れられてしまっているがためのことではありますが、他の怪獣が現れても生物学的な調査は行われません。
一方のガメラ。殊ギャオスについては消化物からの食性や死骸からのDNA採取など様々な調査が行われ、その結果、
- 肉食で人間を捕食する
- 単独で繁殖が可能である
- 夜行性であり日光が苦手(後に目に遮光板を獲得し克服)
などが判明し、それに加えて異常な進化速度から『人工的な生命体ではないか』という推測がなされています。
ちなみにギャオスという名称、昭和シリーズにおいては「ギャオーっと鳴くからギャオス」という身も蓋もない命名の仕方でしたが、平成三部作においては、ガメラが眠りについていた漂流する岩礁に刺さっていた古代の碑文『最後の希望・ガメラ、時のゆりかごに託す。災いの影・ギャオスと共に目覚めん』という文から取られています。
まあどのみちギャオーっと鳴くんですが。
ガメラについては生体サンプルが採取できないこともあってか生物学的な調査は進みませんが、ギャオスの調査結果と碑文から『何らかの理由で生み出されたギャオスを駆除するために造られたのがガメラなのでは』と推察がされました。
また劇中において、ガメラの能力の1つに人間との感応能力が明らかにされています。劇中では岩礁から回収された勾玉を手に入れた草薙浅黄がその相手に選ばれ、このことが続く第二作、第三作においても重要なファクターとして取り扱われることとなります。
ガメラ2レギオン襲来
第二作として制作された『ガメラ2 レギオン襲来』においても、第一作で好評だった点を踏襲しつつ、映像面や演出面での強化がなされ、登場する敵怪獣レギオンの特異なフォルムと相まってか興行収入は三部作の中で最も高い7億円を記録しています。
当時の日本における怪獣映画はまだ着ぐるみや模型、操演が全盛で、CGによるモデリングは未成熟でした。ギャオスにしてもそれまでのゴジラ映画に登場してきた怪獣にしても、クモンガやカマキラスなど操演を前提としたもの以外は、基本的には人が中に入って演技することを前提としたフォルムであったことはいうまでもありません。
レギオンも、マザー、ソルジャーともにスーツアクターによる演技を前提としていることに違いはありません。しかしながらレギオンは、一見して人が中に入っているようには見えない節足動物をモチーフとしたデザインがされています。
近いところでいえば『ゴジラvsデストロイア』に登場したデストロイア集合体がありますが、あくまで他と比べて比較的近いというだけのことであり、殊マザーレギオンについてはやはり似ても似つきません。そして現在に至るまで、レギオンに類するフォルムを有した特撮怪獣というものは、寡聞にして存じません。
その分スーツアクターも2人必要で、演じる側にとっても特異な怪獣と言えますが、そのおかげか、出演作品が一作品だけでありながら、第三作で登場した同じく単品出演のイリスともども人気が高い怪獣です。
レギオンは宇宙から飛来した地球外生命体。巨大なマザーレギオンとマザーに管理されるソルジャーレギオン、そしてそれらと共生関係にある草体・レギオンプラントが存在し、
- 土などに含まれる二酸化ケイ素を食べ、その過程で大量の酸素ガスを放出する→地上の大気成分が変化する
- 電磁波でコミュニケーションを取る→携帯や変電所など、電磁波を発するものを敵として認識する
- レギオンプラントの種子を射出し次の惑星に移動、繁殖を行う→射出そのものが核爆発並みの破壊力を伴う
などの理由から地球上の生物とは共生できず、即座に殲滅あるのみと判断されました。実際に上記の性質により、支笏湖付近に落下したレギオンは電磁波が多い場所=都市を目指し、札幌に続いて確認された仙台は、種子発射の余波によって消滅しました。
また、劇中にて回収されたソルジャーレギオンを解剖した結果から、少なくともソルジャーレギオンについては筋肉に類する器官が存在せず、ガス圧によって関節を動かしていることが判明しています。
ソルジャーレギオン
ソルジャーレギオン単体ならば人間が保有する武器で十分対処可能です。実際に劇中では9mm拳銃によって対処されています。勿論、武器を持っていない民間人にとっては驚異以外の何物でもなく、初めて存在が確認された札幌の地下鉄では多数の犠牲者が出ています。大泉洋さんとか。
しかしながらソルジャーレギオンは基本的に集団で行動する個体であり、数が揃った場合はガメラをも倒し得るほどの能力を有しています。
ソルジャーレギオンにはマイクロ波を発振する能力があり、それを利用してガメラの全身にまとわりつき、電子レンジの中にいるような状態に追い込んでダメージを与え、実際に一度はガメラに膝をつかせました。また、マザーレギオンの腹部に存在するエッグチャンバーでは毎時100匹単位でソルジャーが生み出されており、マザーを斃すか、腹部のエッグチャンバーを破壊しない限りソルジャーレギオンの驚異は取り除くことができません。
ところで、劇中でのソルジャーレギオン初登場シーンで本気で驚いたのは私だけではないはず。
レギオンプラント
劇中で草体と呼称され、レギオンが二酸化ケイ素を摂取した際に放出される酸素ガスを得て成長し、更にそれを利用して種子を射出、繁殖を行っています。名称にレギオンの名がついてはいますが、あくまで同時期に出現した非常に関連性の高い存在であるというだけで、ソルジャーレギオンやマザーレギオンと同じ種族であるかどうかは解明されていません。ただ、これも劇中で言及されましたが、ソルジャー及びマザーとプラントの間にはハキリアリと木々のような関係があると類推されていることから、恐らくは全く別の生命体ではないかと思われます。
レギオンプラントそのものには攻撃能力はなく、自衛及び繁殖にはソルジャーレギオンとマザーレギオンの存在が必要不可欠です。同様にマザーレギオンらにとっても他惑星への移動に際しプラントの種子が必要であると考えられ、別の生命体とはいえ両者の間には共生どころか共依存の関係が成り立っているのではないでしょうか。
劇中では二度登場し、最初の札幌ではガメラによって種子発射を阻止されましたが、仙台ではガメラが間に合わず、種子を宇宙に上げることこそ叶いませんでしたが、先述の通り仙台を消滅させています。またこのときの爆発で、ガメラも一時活動不可能に陥っています。
マザーレギオン
多くの場合で単純にレギオンという場合、このマザーレギオンのことを指していることが多いように感じます。ガメラを上回る体格とパワーを有し、更にマイクロ波を利用したレーザー『マイクロ波シェル』や、ガメラのプラズマ火球を無効化する干渉波クローなどを備えており、ガメラも終始苦戦を強いられました。
最終的にはガメラの援護に動いた自衛隊とガメラによって頭部の大角を折られ、マナを大量消費するガメラの切り札『ウルティメイト・プラズマ』で斃されますが、このことが後の平成三部作最終作に大きな爪痕を残すことになります。
ガメラ3邪神覚醒
第二作から更に一年後を舞台とした『ガメラ3 邪神覚醒』では、第一作で言及されていた『ギャオスが渡りを行っていたとしたら』という仮説が残念ながら的中し、世界中でギャオスの発見報告が相次いでいます。このときのギャオスは第一作の頃と比べると体格は細身となっていますが、凶暴性はむしろ増し、繁殖力も強化されています。
更に、ギャオス変異体とされる謎の怪獣も出現。様々な人の思惑が交錯する中、ギャオス変異体・イリス、そしてガメラは決戦の地・京都へと――
ギャオス/イリス/ガメラ
ガメラ3の公開以来、イリスについては様々な考察がなされてきました。
劇中にて、ガメラを憎む少女・比良坂綾奈によって『イリス』と名付けられた怪獣は、あくまで『ギャオスの変異体』として扱われます。
しかしそれと示す明確な証拠はどこにもなく、むしろその容姿はギャオスとは似ても似つかない、到底変異体などという言葉だけでは片付けられない代物。仮に進化の過程で環境に応じて姿が変化したのだとしても、覚醒直後の幼体の時点でギャオスとの相違は明らかです。
ギャオス | イリス幼体 | |
---|---|---|
外見 | 翼膜などコウモリに類似する特徴を有しつつ、鳥類のような足を持つ | 口がない頭部と捕食器官を有する複数の触腕を持ち、巻貝のような外殻が体の一部を覆っている |
食性 | 肉食 | 雑食? |
ギャオスが空の生物であるのに対し、イリスは海の生物に近い外見です。食事方法も触腕から伸びる管を対象に突き刺して吸い取るというもので、食事というよりも吸収と呼ぶべきもの。劇中にて成長したイリスはギャオス同様に人間を捕食していますが、最初に襲われたキャンプ客(仲間由紀恵)はミイラ化した状態で発見され、その後襲われた南明日香村でも複数のミイラ化した遺体が見つかっています。
ギャオスならばどうでしょうか。ギャオスの捕食シーンは第一作にて明確に描かれていますが、通常の肉食生物と同様に経口摂取による捕食を行っており、あとに残るのはペリットかフン程度のもの。誕生した瞬間からこれほど明確に違うのなら、それはもはや変異体などではなく完全に別の生命体と考えるのが妥当ではないでしょうか。
また、ギャオスもイリスも卵から孵化した生物ではありますが、その卵の様相も全く異なります。
劇中で幾度も語られているように、ギャオスは一度に複数の卵を生み、爆発的な繁殖力を有します。その結果、第三作のクライマックスには日本に向けて大量のギャオスの接近が確認され、自衛隊は攻撃優先目標をギャオスに変更。イリスとの戦いで傷ついたガメラも、その大群を迎撃すべく、雄叫びを上げます。
ではイリスは? イリスの卵は劇中で登場した一つのみで、その形状も、見た目そのまま鳥卵であるギャオスとは違い、まるで岩の塊か、何かの甲羅のよう。仮に耐久卵の状態で何者かによって移動させられたのだとしても、辻褄が合いません。
イリスの正体とは
ここからは劇中で明らかとなっているイリス、ギャオス、そしてガメラの情報を元に妄想垂れ流しで参りますのでご注意ください。
なお、本項目の作成に際し、下記のサイト様を参考にさせていただいている部分がございます。
イリスに与えられた役目は、二つあるのではないでしょうか。
一つは、ガメラを斃すこと。そしてもう一つは、ギャオスを制御すること。
ギャオスは、遺伝子レベルで調整が加えられた生物です。最も特筆すべきはその繁殖力、というより最早増殖力で、一個体でも生存していれば絶滅は起こりません。これ自体は、おそらくギャオスの設計段階から盛り込まれていた仕様でしょう。
仮にギャオスの製造目的が、劇中で語られたとおり『古代文明において増えすぎた人口を調節するため』だと仮定します。人口を調節するといえばまだ多少は聞こえはいいですが、その方法は別の生物による捕食。当然、人々は抵抗するでしょう。
抵抗されれば、ギャオスの側にも多少なりとも被害は出てしまうことは避けられません。陸上生物として開発すればある程度頑強な外殻を持たせ、その被害を抑えることもできたでしょうが、飛行型となると早々重たいものをまとわせるわけには行きません。
また、陸上型では、もし投入した大陸から人々が避難した場合に、本来の目的を果たすことができなくなってしまう可能性があります。ギャオスを飛行型とすることもまた、設計段階から盛り込まれていたことだと考えられます。
陸上型は選択肢として除外され、故に防御力の増強は難しい。ならばと、開発者(以下ギャオス派)がたどり着いた結論は――繁殖力の強化。
一を減らされれば十を増やし、十斃されれば百を生み出す。たとえ最後の一匹になろうとも、それが繁殖能力を有していれば何の問題もない。ギャオス派はそう考え、実際にそういう生物、ギャオスを生み出したのではないでしょうか。
彼らにとっての誤算――というよりも見積もりの甘さですが、それは繁殖力が強くなりすぎたこと。人口を調整できればそれでよかったはずが、気づけばこちらが絶滅の危機に瀕しかねないまでにギャオスは増え続け、既に彼らの手に負えない代物になりつつありました。
そんな中、一つの計画が立ち上がります。それは、ギャオスを駆逐し、また後に訪れるであろう災厄から地球を守護するための力の創造。すなわち、ガメラ。数多の失敗を繰り返しながらもついに誕生したガメラは、目論見通りにギャオスを劇的に減らし、人類の、ひいては地球の守護者たりうる存在となりました。
これを面白く思わないのは当然ギャオス派。確かにギャオスは人類に対する脅威となっていたが、それでもこのまま人口が増え続ければどのみち人類は絶滅の道をたどることとなる。ならば駆逐するよりも、制御する方法を編み出したほうが賢明なのではなかろうか。こうしてギャオス派は、新たな生物兵器の開発に着手します。それこそが、後にイリスと名付けられ、邪神と恐れられる存在だったのではないでしょうか。
イリスの製造にあたっては、当然ガメラの調査も行われたでしょう。
ガメラには勾玉を介した感応能力があります。そして、イリスにも同様の能力が備わっており、劇中では綾奈がイリスの巫女としての役割を担うこととなります。
ギャオスを制御し、人口を自在に調整するためには、そもそもギャオスの敵であるガメラは忌むべき存在。ならばギャオスの頂点に君臨する女王は、何においてもガメラよりも劣ってはならない――ギャオス派が諦めた、防御力と飛行能力の両立を成功させたガメラに対する嫉妬も、多少はあったのかもしれません。何れにせよ、ガメラを超えるためにまずガメラと同じ力を与えるというのは、至極妥当な話ではあります。
また、感応能力でイリスの制御ができれば、その指揮下にあるギャオスの制御も可能であるとも考えたかもしれません。
更にあらゆる生物の遺伝子情報を注入し、仮にガメラ以外の敵が現れたとしても、あるいはガメラがどのような進化を遂げたとしても優位に立てるように調整。それでも不測の事態に備えてイリス自身にも遺伝子吸収の能力を付与し、ついに彼らは、イリスの完成一歩手前までたどり着きました。
しかし、ついに誕生だというところでガメラ派の人間がギャオス派の動向を察知し、彼らの手からイリスの卵を奪取。後に南明日香村となる地にて、卵を封印してしまいます。
このときすでに、古代文明はギャオスによる滅亡が確定していたのでしょう。ガメラを持ってしても全てのギャオスを斃すには至らず、安住の地を求めようにも世界中ギャオスの卵だらけ。もしこんな状況でギャオスを制御しうる存在が現れたら。そして、その存在を人間の側が制御できてしまったら。世界は間違いなく、その人間――ギャオス派によって支配されてしまう。
そうなってしまっては、仮に人類が生き残れたとしても待っているのはディストピアでしかない。ガメラ派にとってイリスの封印は、最後の悪あがきのつもりだったのでしょう。
しかしここに来て、ガメラ派に追い風が吹きます。
ギャオスの登場によって、地球そのものの環境にも影響が現れたことでしょう。それにより活動中のギャオスは次々と息絶え、世界には一時の平和が訪れます。無論古代文明にとっては遅きに失した環境変化であり、結局彼らは滅亡してしまうことになるのですが。
それでも、ガメラ派は、後に現れるであろう新たな人類に向けて、ガメラを託します。最後の希望として。災いの種が目覚めるときに、ガメラもまた覚醒するように。
生命エネルギー・マナ
平成三部作で鍵となるのがこの生命エネルギー・マナ。万物に宿る生命の源として描かれ、ガメラの力の根源ともなっていますが、同じく古代文明が生み出したはずのギャオスにはマナに関する能力は確認されていません。
もしかすると先述の『ガメラ派』と『ギャオス派』は、『マナ派』と『反マナ派』と言い換えることができるのではないでしょうか。
古くからマナを物事の中心に据えてきたマナ派と、それを不確かなものとして嫌った反マナ派。両者の考え方の違いは、そっくりそのままガメラとギャオスとして映し出されているのではないかと考えられます。
イリスもまた、マナを何らかの形で利用しているという描写は見受けられません。精神感応能力についてはマナを介しているのかもしれませんが、少なくともそれ以上のものは確認できません。
綻びた封印
後の南明日香村に運ばれたイリスの卵は、甲羅状の岩の下に封印されます。この岩は力士が数人がかりで持ち上げようとしても動かなかったという言い伝えがありますが、劇中では綾奈がたった一人で運び出しています。
これは特別綾奈が力持ちだったということではなく、マナの急激な減少により封印の力に綻びが生じたと考えられます。
事の発端はこの出来事の一年前。この年、地球は大量のマナを消費せざるを得ない事態に襲われました。レギオンの襲来と、それに伴うガメラのウルティメイト・プラズマ使用です。
ウルティメイト・プラズマはその威力の代償として、地球上のマナに著しい減少を強います。しかしそれを使わざるを得ないほどレギオンは強大な敵であり、ガメラにとっても苦渋の決断だったのでしょう。また、ウルティメイト・プラズマの使用前にも、活動不能になったガメラを蘇生するため、子供たちの祈りに反応してマナが消費されています。
その結果として、ただでさえ安定を欠いていたマナは一層不安定になり、世界各地でギャオスの耐久卵が孵化するという事態に発展。形振りかまっていられなくなったガメラは、たとえそこが人々が行き交う渋谷という場所でも関係なく、ギャオスの駆逐に臨みます。その戦闘で多くの犠牲者が出たとしても、大事の前の小事であると言わんばかりに。
このことがきっかけでガメラは自衛隊の攻撃対象に再度指定され、綾奈を取り込んだイリスを追撃中に攻撃を受けます。
しかしそれでもガメラは人類に牙をむくことをせず、右手を失いながらも自らを憎んでいる綾奈をイリスから救い出し、日本へと迫るギャオスの大群に最後の戦いを挑みます。
令和で復活なるか
夜の京都に響き渡るガメラの咆哮。これを最後に、平成三部作は幕を下ろし、公式作品としては後の『小さき勇者たち~ガメラ~』を最後に、ガメラの長編映画は作られていません。
2015年にはガメラ生誕50周年として新作映像が公開されましたがそれ以降は動きは見られず、ファンは今もやきもきしていることと思います。
間もなく平成も終わり、令和という時代がやってきます。果たして、ガメラは令和の時代に蘇ることになるのでしょうか。